研究テーマ概要

Theme01: 精密重合法による特殊構造ポリマーの合成



多数の分岐構造を有する星型ポリマーや環構造を有する単環状・多環状ポリマー、かご型ポリマーはその特殊な構造に由来して通常の直鎖状ポリマーとは異なる物性を発現します。私たちは、様々な精密合成技術を駆使して、これらのいわゆる "特殊構造ポリマー" を効率的に得る手法を開発することで、より詳細な物性解析や有用な材料開発を目指して研究を進めています。


例:連鎖的環形成による環状高分子の精密合成

この研究に関連する論文はコチラ
論文1(多環状), Macromolecules(2018)

他にも様々な特殊構造ポリマーの合成を行なっています
論文2(星型・八の字型), Macromolecules(2013)
論文3(単環状・八の字型・タッドポール型), Macromolecules(2014)
論文4(星型), Macromolecules(2016)
論文5(ブラシ型), Macromolecules(2014)
論文6(かご型), Chem. Sci.(2019)
論文7(かご型側鎖構造を有するグラフトポリマー), Macromolecules(2021)

Theme02: 構造制御されたナノ構造体の開発



異なるポリマーが化学的に結合した “ブロック共重合体” は、固体中または薄膜中で自己組織化します。その結果、“ミクロ相分離構造”と呼ばれるナノスケール構造体を形成します。このミクロ相分離構造は次世代リソグラフィー技術などのナノテクノロジー分野への応用が期待されています。私たちは精密合成したブロック共重合体の自己組織化挙動を詳細に解析することで様々な目的に応じたナノ構造体の構築を目指しています。また、これらのブロック共重合体を Theme 01 のように特殊構造化すると、直鎖状のブロック共重合体とは異なるナノ構造体を形成する場合があるため、ポリマー構造とナノ構造体の相関関係の研究は非常に重要な課題です。


例:オリゴ糖とポリカプロラクトンからなるブロック共重合体。分岐構造の違いに応じて固体中および水溶液中で異なる自己組織化構造を形成。

この研究に関連する論文はコチラ
論文1(分子内架橋法を用いた自己組織化構造制御), Angew. Chem. Int. Ed.(2021)
論文2(バイオベースブロック共重合体の自己組織化構造と力学特性評価), Macromolecules(2020)

他にも様々なポリマーを合成して自己組織化構造の評価を行なっています
論文3(末端修飾によるブロック共重合体の自己組織化挙動), Macromolecules(2018)
論文4(バイオベースブロック共重合体の自己組織化), Biomacromolecules(2022)
論文5(有機無機ハイブリッドブロック共重合体の自己組織化), Nanomaterials(2022)

Theme03: 重金属フリーの触媒を用いた精密重合系の開発



ポリエステルやポリエーテルは生分解性や生体適合性が知られており、生分解性材料や医療材料などへの応用が期待されています。上記の高分子はこれまでに、有機金属触媒を用いた開環重合による精密合成が達成されてきました。しかし、近年では環境や生体に対する悪影響が懸念されており、重金属元素を含まない触媒や溶媒を使用しないクリーンな重合系に注目が集められています。私たちの研究室では、環状モノマーの精密重合に着目し、環境低負荷な新規触媒や重合経路の開発、およびサスティナブルな新規材料の開発を目指して研究を進めています。


例:リン酸触媒による環状モノマーの精密開環重合

この研究に関連する論文はコチラ
論文1(環状エステル類の開環重合), Polym. Chem.(2015)
論文2(環状カーボネートの開環重合), Macromolecules(2013)

食品添加物にも用いられるカルボン酸アルカリ金属塩を用いた精密開環重合に関連する論文はコチラ
論文3(環状エステル類の開環重合), Macromolecules(2018)
論文4(環状モノマーのセルフスイッチ重合), J. Am. Chem. Soc.(2022)
論文5(環状エーテル/環状チオエーテル類の開環重合), Macromolecules(2022)

Theme04: 新規導電性高分子の開発



導電性を有する π 共役系ポリマーは安価で軽量であることから、近年では銀行の ATM やスマートフォンなどのタッチパネルの他、パソコンやテレビなどの有機 EL ディスプレイ材料としての応用が期待されています。私たちの研究室では鈴木-宮浦カップリング反応を応用した重合法を用いて構造を厳密に制御した π 共役系ポリマーを合成することで、優れた電気特性を有する新規材料の開発を目指しています。

例:共役ポリマーとソフトポリマーからなるブロック共重合体を用いたスイッチャブルデバイス

この研究に関連する論文はコチラ
論文1(ポリチオフェンとポリアクリレートを用いたフレキシブルな電界効果トランジスタ(FET)の開発), Macromolecules(2017)
論文2(ポリチオフェンをベースに用いた高性能メモリーデバイスの開発), Adv. Funct. Mater.(2016)
論文3(ポリフルオレンをベースに用いた高性能フレキシブルメモリーデバイスの開発), NPG Asia Materials(2016)

Theme05: 環境低負荷な機能性高分子材料の開発



近年、プラスチック材料による環境汚染問題に関心が集まっています。そこで、当研究室では“糖鎖やポリエステルを用いた環境に優しい高分子材料”の開発を進めています。具体的には、工業的に利用されるエラストマー材料や相溶化剤 (異なるポリマーを混ざりやすくする界面活性剤のような材料) の開発を行っています。さらに、Theme01 (特殊構造) や Theme02 (ミクロ相分離) で得られた知見も利用することで、既存のプラスチック材料を凌駕する新たな環境低負荷材料の創製を目指しています。


例:アミロースベースのエラストマー材料

この研究に関連する論文はコチラ
論文1(アミロースベースのエラストマー材料の開発), Macromolecules(2020)
論文2(酢酸セルロースベースのエラストマー材料の開発), ACS Sustainable Chem. Eng.(2021)
論文3(ポリヒドロキシアルカン酸の物性改質を目指した相溶化剤の開発), ACS Sustainable Chem. Eng.(2019)