研究テーマ概要

テーマ1:バクテリア産生セルロース (BC) をベースとした環境循環型高分子材料の創製



Figure 1. セルロースとバクテリアセルロース(BC)

セルロースは自然界に最も豊富に存在する高分子で、地球上での年間生産量は2,000 億トンと言われており、その量は穀物年間生産量の数十倍におよびます。セルロースは、大気中の二酸化炭素を原料として、植物の光合成により生産されるグルコースがβ 1、4 結合した直鎖状の高分子(多糖)であり、非常に丈夫な材料です。セルロースそのものは紙や衣類として、またその誘導体は、増粘剤、フィルター、液晶パネルなど様々なところで利用されています。セルロースは基本的に化学合成することができず、そのほとんどは植物によって合成されますが、バクテリア、藻類、カビ、動物(ホヤ)によっても合成されることが知られています。この内、バクテリアによって合成されるセルロースは、バクテリアセルロース(BC)と呼ばれ、植物由来のセルロースとは異なるユニークな構造と性質を有しており、それらを利用した様々な材料への応用が検討、あるいは実用化されています。


Figure 2. BCをベースとした環境循環型高分子材料の創製

当研究室ではバクテリアが作り出すセルロースに着目し、様々な機能性ポリマーを創製するための研究を行っています(バクテリアセルロース合成機構の解明、ファーメンターを用いた微生物ナノセルロース(NFBC)の大量調製、NFBCを用いた高強度循環型高分子材料の創製、微生物を用いた微小重力空間(国際宇宙ステーション)におけるセルロースの調製)。

この研究に関連する論文はコチラ
論文1(バクテリアのセルロース合成機構)
論文2(セルロース生産菌を用いた両親媒性ナノフィブリル化セルロースのワンステップ製造法)
論文3(パクリタキセル含有NFBC製剤の治療効果)
論文4(NFBCを強化材として用いたポリカプロラクトンの機械的特性の改善)
論文5(ヒアルロン酸/BC複合体ナノフィブリルのバイオファブリケーション)

この研究に関連する動画はコチラ
動画1(SDGsシーズ~未来を拓く研究~)
動画2(What's サポイン 草野作工株式会社)

テーマ2:生物発光・化学発光を利用した新しい分析法の開発



Figure 1(左). マイクロ流体デバイスや紙デバイスを用いたBLアッセイ
Figure 2(右). カチオンリポソームによる増感BL反応

生物発光・化学発光は,化学反応に伴い発光を生じる現象であり,その発光強度や波長は,反応物質や反応場に依存するため,分析化学における検出法として広く利用されています。反応物質を混合するだけで光を生じるため光源を必要としないことや,高感度な物質計測が可能であることなど,さまざまな利点を有しています。中でも,ホタルの発光反応としても有名なルシフェリン-ルシフェラーゼ反応は,環境や医療などの分野で物質計測法として応用されるだけでなく,レポーターアッセイなど生化学研究において不可欠のツールとなっています。現在ではホタルだけでなく様々な生物種の発光反応が利用されています。一方,人工的に構築された化学発光反応も数多く発見され,様々な分野に分析法として応用されています。犯罪捜査における血痕鑑定として知られているルミノール検査はその代表例です。


Figure 3. フルオレセイン/ペルオキシダーゼ振動化学発光

生物発光・化学発光は,分析法として古くから利用されているものの,時代とともに変化するニーズに応える,より高性能かつ汎用的な分析法への進化が求められています。私たちは,生物発光・化学発光の優れた特徴をいかしつつ,特異な反応場や発光応答に着目した新しい分析法の開発を目指しています。